日本をはじめて訪れる外国人は、「道路にゴミが全く落ちていない」と、どこへ行っても清潔なことに、まず驚くと言います。
そんなきれい好きな日本人にもかかわらず、口の中のお掃除だけはどうも苦手なようです。
ひとつ面白いデータがあります。
実は、「欧米人の間では常識なのに、日本人はほとんどやっていない」というのが、「デンタルフロス」によるケア。
平成28年の歯科疾患実態調査では、デンタルフロスや歯間ブラシを用いた歯間部清掃を行っている人の割合は約30パーセントでした。
40~70代に注目すると、女性では50%以上がデンタルフロスや歯間ブラシを用いた歯間部清掃を行っていましたが、男性の使用率は35%前後という低い状況でした。
1998年、アメリカ歯周病学会が掲げたスローガンは「Floss or Die! (デンタルフロスか死か!)」。
今や国民病ともいわれる歯周病ですが、歯周病予防には、デンタルフロスによるケア、もしくは歯間ブラシによるケアがある理由によって欠かせないのです。
その理由というのが、歯の汚れであるプラーク(歯垢)は、歯ブラシ単独では約60%しか除去できないという衝撃の事実です。
つまり、残りの40%の歯垢は除去されずに残ったまま、というわけです。
ではそこで、歯ブラシでのブラッシングに追加してデンタルフロスによるケアを行った場合はどうでしょうか。
なんと、デンタルフロスによるケアを追加すると約85%の歯垢が除去できるというデータが出ているのです。
更には、デンタルフロスに代わって歯間ブラシによるケアを行った場合では、約95%ものプラークが除去できると言われています。
このことを、知らない日本人は多いのではないでしょうか。
歯医者に行くと、必ずと言っていいほど歯磨きに加えて、デンタルフロスや歯間ブラシを使うように勧められるでしょう。
その理由は、どんなに歯磨きが上手な人でも、歯磨き単独では、汚れを取り残してしまうのです。
このように丁寧な説明を受ければ、デンタルフロスや歯間ブラシを使わなくてはいけない理由が理解できるのではないでしょうか。
一方で、欧米では予防歯科が浸透しており、小さい頃から歯医者に通う習慣があります。
そのため、こうしたブラッシングの正しい基礎知識は歯科医院にて専門家から直接教えてもらいます。
ですから、子供の時にデンタルフロスによるケアが習慣化されるのです。
子供のときに身についた習慣というのは、いくつになっても習慣であり続けます。
そのため、欧米人からすると、仕事場にデンタルフロスが置いてあるのが、当たり前の景色なのです。
しかし、日本では大抵歯医者に行くのは歯が痛くなってからです。
ブラッシングの仕方は多くの場合、親が子に教えます。
親のやり方を踏襲している場合が多いので、もし親が間違った方法でブラッシングをしていれば、子供も間違った方法で磨くことになります。
結果、家族みんなで間違ったブラッシングをしている危険があるわけです。大体そうした家庭では、子供はデンタルフロスを見たことすらありません。
その差が、80歳になったときの歯の残存数として明確に表れています。
人は20本以上の歯があれば、食生活にほぼ満足することができると言われていますが、
歯科予防大国であるスウェーデンが19本、アメリカが18本である一方、日本は15本(厚生労働省平成28年度歯科疾患実態調査より)と欧米と比較し大きく後れをとっています。
そして、上記の数字はあくまで平均値であることに注意してください。
欧米のエリート層は80歳になってもほとんどの歯が残っており、健康な歯で美味しく食事をとっていることは、説明する必要はないでしょう。
いつまでも自分の歯でおいしく食事を楽しめるかどうかは、歯磨きに加えたこのひと手間がとても重要なのです。
そのことを知っている欧米人と、知らない日本人。その差は、歯の数だけではなく、笑った時の歯の美しさにも如実に表れているように思います。
歯を大切にする意識や幼い頃からの正しいブラッシング習慣の積み重ねの結果として、美しい歯があるのではないでしょうか。
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